三年目の正直

週末、本年度の中学校演劇部の地区大会が行われた。

本来は夏。 

2ヶ月半、ずれたし、

毎週3回まで、一回あたり2時間まで、

土日もどちらか1日のみ、しかも3時間以内、

というコロナ対策の活動で

はっきり言って全然作品を深める時間なんて

なかった。

だけどそれは、どの学校も同じ条件。

だから言い訳はするまい。

そう思って、時間を惜しんでやってきた…

けれど。

だらだらしてしまう練習。

たいした理由なく休んでしまう脇役達。

稽古中に私語の嵐。

面白くならないコメディシーン。

時間が足りなすぎた。

 

 

ひとつひとつ、話をした。

少しずつ、問題を潰していった。

結局最後まで間に合わなかったところもあるけれど

私が転勤して3年目にして

一番納得できた仕上がりになったことは確かだった。

 

 

今回の大会は、コロナ禍もあり、

参加校は少なく

午前の学校は午前の部しか見られず、午後もそうだった。

そして結果はその日には知らされず

後日FAXということになっていた。

 

 

発表が終わってすぐ、

審査員の学さんが話しかけてきた。

「時間を気にしすぎた?もっと時間を上手に使えばよかったと思うよ」って。

ああ、終わった、と思った。

60分の作品を40分にしなければならず

削りに削ってさらに

かぶせられるセリフは全部そうした。

そうさせたのは私だった。

責任は私にある。

ごめんね、みんな、って、思った。

 

今回の大会では、受付も誘導も顧問がやったので

ほとんど他校の発表を観ることも叶わず

結果も知らされずに終了し

帰路につこうとしたとき

再び審査員学さんに呼び止められ

「あと少しだったのに、残念だった」と言われた。

うーん、そうか。

帰りに駄目押しするほどか。

ここからまた精進して

苦手なコメディをもっと極めて出直そう、と思いその日は終わり

次の日の夕方のFAXを期待もせずに待った。

 

 

そうしたら、結果が

 

いつもの「優良賞」じゃなくて

とてもほしかった「優秀賞」だった。

転勤して三年目。

やっぱり前任校であそこまで闘えたのは

まぐれだったのかな、

私に指導力があったわけじゃなくて

巡り合わせと優秀な部員に恵まれただけだったんだな、って思ってた。

もちろんそう。

そうなんだけど、

私と今の部員達とで考えたいくつかの演出や演技が

評価されたんだとしたら本当に嬉しい。

私と一緒に三年間やってきた三年生達に

この嬉しさをプレゼントできたことが

本当に嬉しい。

 

審査員学さんの言葉が

違う意味を持って感じられ始めた。

時間を上手に使えば。残念。

これらの言葉は

あと少しの努力で

あと少しの工夫次第で

もしかしたらもっと上にいけたということ。

そっか。

だからいつになくたくさん話しかけてくれて

私を励ましてくれてたのか。

もしかして。多分。

 

1日経って

部員達ともこの幸せを共有して

だから私はもっと先に進めることができる気がしてる。

頼りにしてた三年生がいなくなるのは心細いけど

一、二年生達と。

また作っていくよ。

 

 

強い弱い、とか、賞をもらうもらわない、とか

じゃないのもわかってる。

もらえなかったとしても

今回私達は、良いものを作ろうとした自信はある。

観客を楽しませ、演じる自分たちも楽しもうとした自負はある。

でも、やっぱりもらえれば嬉しいし

自信になる。

ここからまた、がんばろう。

って、思えるよ。