皆既月食の思い出

今夜は、「ほぼ皆既月食」だった。

いつも通り、帰りに母のところに寄り、

おかずを届けたときに

「今夜は皆既月食だよ」って言って

ふたりで外に出た。

その時お月様はまだ結構細くて

上の方がうっすらオレンジ色だった。

一緒にそれを見た。

「あらまぁ」って母が言って

「少ししたらまた観てごらん、

きっと形が大きくなってるよ」って

私が言って

私は、バイバイって帰ってきた。

それから二時間後。

母から電話があった。

何かあったのかと心配で

急いで出たら

「お月様、大きくなってる、

それに場所も変わってるのよ、さっきとは」

って。

 

いつも、話したそばから

色んなことを忘れてしまうようになった母が

話した二時間後に月を見てくれたこと

そして電話で報告してくれたことは

小さな奇跡だと思った。

お月様の魔法かもしれない。

 

皆既月食があるたび

私はこのことを思い出すだろう。

そんな

切ない

皆既月食の夜。